「五部作」の挑戦

前回からの続き)

―今回、新作っていうことで、新作ではオリザさん、なにか新しいトライを、よくすると思うんですけど、そういう演出的な実験とかってありますか?『眠れない夜なんてない』だったら、中途半端な感じとか、言い間違いとか、そういうのがあったと思うんだけど。
松田:言ってたね(笑)「打倒チェルフィッチュ」とか(笑)
山内:今回の場合は、演出は、なんか、「繰り返す」ってこと。「打倒マームとジプシー」とか言ってたよね。なんかね(笑)
志賀:『サンパウロ』の踊りで「白神(ももこ)を超える!」とか(笑)
山内:なんだそりゃ。
松田:言ってた。むちゃくちゃだよね。
―あーあ(笑)…若者をライバル視するのが好きですよね、オリザさんはね。
志賀:これは実験とかじゃないんだけど「間を詰めるんだけどゆっくりしゃべる」っていうのがね、いつのときからかなぁ。
山内:ずいぶん前からだけどね。
松田:私もずっと言われてるな。…いまはね(笑)なんか、あの、50を過ぎてくるとですね、だんだん台詞が入んないんですけど、『恋愛二重奏』に私と大塚さんがわりとずっと一緒に出てるから、大塚さんが途中で「もうだめだ…」とか言い出して、そしたらオリザが「大丈夫!できる!」って(笑)、
山内:なんだそりゃ(笑)
志賀:ハハ(笑)
―(笑)
松田:こないだ私も、なんか台詞がわかんなくなってきちゃって「あれ?なんだっけ?ごめんごめん、なんかわかんなくなってきちゃった」っていったら、オリザがね、「『ええ⇒ああ⇒えっ?⇒ああ』の順番だから」って言って(笑)
一同:(笑)
松田:「あぁ、『ええ⇒ああ⇒えっ?⇒ああ』か。オッケーオッケー」みたいな(笑)
志賀:ああ、そうそう、この前「語尾を間違えないように」って言ってて、あれは珍しいなと思ってたんだけど。
松田:ああ、あれね、珍しい。「自主稽古のときに誰か見てる人が居て、語尾とかチェックしてください」って言って。ちゃんと書いてるんだな、っていったら悪いんだけど(笑)、打ち間違いかな、と思ってこっちで勝手に直しちゃったりするとこもあるんですけど、やっぱり書いた人にちゃんと聞かないとダメだなぁと思って。
山内:なんか音で決めてるとか言ってたけどね。「えっ?はっ?えっ?…うん」とか。ついこの間、そんなこと呟いてて面白いこというなぁと思って。
志賀:ああそうだね。
松田:私もこの間最初に読んだときかなんかに「ええ」って書いてあったんだけど、読んだら「ああ、そこ『うん』だった」て修正された。だから、理由があるんだよね。
山内:やってみてわかったのは「ソウルとサンパウロ違うんだなぁ」っていうことが、あまりにも大きいんだよね。
松田:一見台本似てるのに、っていう意味ですか?
山内:うん。全然違うんだっていうのが。一番おっきな発見。
志賀:うんうん。空気感というかね。ほとんど同じ台詞で作られてるシーンがあるのにね。
松田:へー、面白いね。
山内:たぶん混線はしない、というくらい。
志賀:しょっぱなに堀切さん(『サンパウロ市民』)のことを「堀田さん」ていいそうだけど。(笑)
一同:(笑)
松田:固有名詞ってさ、必然性がないからさ、もともと間違えやすいのにね(笑)
志賀:ガラッと変えてよ!って(笑)
山内:でもガラッと変えて出て来なかったらもっと怖いよ(笑)
松田:「あの…なんだ、堀田さん」っていったら、実は「城之内さん」とかだったらひどいね。(笑)
―でもその、なにが違うのか、っていうのは非常に興味深いですね。
山内:役者で言えば、身体が違う、イメージも違う。
松田:それが、変わってくる根拠的なものが台本じゃないとしたら、何なのかっていうことでしょ。
山内:イメージでしょうね。
松田:サンパウロだからってこと?
志賀:うん、背景が全然違う。
松田:たまたま同じ家だけど、…ふーん面白いねぇ、それ。
―背景が違う、っていうのも根拠としては、わかるようなわからないような感じですよね。観なきゃわからない。
山内:背景っていうか世界が違う。取材で、台本読んで来た人が、オリザに「こんなことやって許されるのはオリザさんだからですよ。怒られますよ」って言ったらしいんだけど。「言ったな?」っていう感じで。
―台本でね。
山内:最初は僕らもそう思ったんだよ「いくら何でもこれコピペすぎねぇ?」とかって。でもやってみたら、そんなことない。
志賀:『ソウル市民』『ソウル市民1919』とおんなじ役の人も、たくさんいるしね。
―そうなると、全体が楽しみですねぇ。
松田:いや、それにしても、大河ドラマ的なあれは、あると思うよ。
山内:まあ、全部には出てみたいね、正直なところ、難しいとは思うけど。
松田:あの、オリザが「同年代のことにしか興味がない。新作は同年代のことしか書かない」とか言ってるけど、今回は『ソウル市民』の新作だから、またちょっと違って面白いよね。
―なるほど。どうもありがとうございました。

(終わり)


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